サステナビリティ
事業部長座談会
事業部長座談会
 
  「SHIFT2030」フェーズ2の売上高目標1,050億円達成に向け、グローバル戦略を主軸とした、より大きなフィールドでの事業展開が重要となります。ニッタは創業140周年を迎えた大きな節目。これまで長きにわたり成長を続けてきた当社を、より高く、より大きな飛躍のステージへと導くために、今、何をなすべきか。さらなる成長を目指し、未来を見据える中で、成長の原動力となる当社の強さ、また課題となるものは何か。ベルト・ゴム製品事業、ホース・チューブ製品事業、化工品事業、空調製品事業におけるそれぞれの成長戦略について、そして事業部を横断する新たな取り組みについて意見を交わしました。
各事業で成長が期待される市場や製品について

黒川)ベルト・ゴム製品事業では、インド、アセアン諸国、中東等、いわゆる「グローバルサウス」へのリソース投入を強化し、成長余地の大きい新興市場への展開を加速しています。加えて、半導体分野等の成長領域にも注力し、事業ポートフォリオの高度化を図っています。ベルト製品事業においては、既存市場では製品が成熟しており大きな成長は見込みにくい状況ですが、市場の転換によって新たな成長が期待できます。そのため、成熟市場から成長市場へのシフトが重要なテーマとなっています。一方、グローバル展開が進むベルト製品事業に対し、化成品事業は海外売上比率が低く、今後はその拡大にも取り組んでいきます。
泉)なるほど、まさに「成長市場へのシフト」ですね。ホース・チューブ製品事業においても、グローバル戦略をさらに推進する計画です。既に海外市場への展開は進んでいますが、現状では日系のお客様を中心とした市場が主体となっています。フェーズ2では現地の海外資本のお客様への販売強化を目指していきます。半導体やデータセンター分野では海外装置メーカーを攻略する等、特に北米や中国の現地資本のお客様への販売を積極的に行い、新たなお客様を開拓することでトップラインの拡大を図ります。深化と探索の両軸による、グローバル化を目指します。
藤田)お二人の話を聞いていても、やはり「エリアとターゲットの最適化」が鍵ですね。化工品事業でもグローバル展開を進めていますが、製品群ごとに戦略のターゲットは異なります。鉄道関連製品は欧州やインド、中国、東南アジアをターゲットにしており、各エリアに合った製品ラインナップを深掘りしていきます。OA部品は主に東南アジアや中国で生産していますが、お客様に業界再編の動きがあり、それに応じた戦略の見直しが求められています。一方、グローバル戦略とは対照的に、ニッチ市場で利益重視の製品展開も行っています。例えば「引布製品」等、国内で製造している企業がほとんど存在しない希少な製品は、安定した利益を確保できる分野となっています。
鈴木)空調製品事業は事業規模の拡大を重要視して推進しており、海外展開では、特にインド市場に注力しています。当事業では台湾に既に工場を構えており、当初は日本市場への補完工場としての位置づけが強かったのですが、今はインドとともにグローバル展開の拠点として計画を推進しています。また、ライフサイエンス分野では、まずニッタブランドの認知向上に注力し、アカデミアや産業界での実績づくりを行っています。大学や研究機関での実績を積み重ね、学会や展示会で製品を紹介し、お客様に提案・導入を繰り返しています。2024年に大阪・中之島の未来医療国際拠点中之島クロスにも出店し、大学や研究機関との連携を通じて、ブランド浸透を図っています。
成長戦略を具現化するための課題について

鈴木)新市場や新製品の開拓においては、既存技術だけでなく、新たな分野に対応できる人材の育成と体制構築が不可欠です。またフィルタ事業等の既存製品の深掘りや、グローバル展開でも人材育成は欠かせません。一方で、限られた人材を効率的に活用し体制を強化するため、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による人材の有効活用も目指しています。
藤田)鈴木さんの話にもありましたが、化工品事業でもグローバル化に伴い人材確保が大きな課題となっています。設備の老朽化も課題の一つであり、生産性の向上や少人化の推進が求められています。加えて、既存ラインの効率的な運用や管理にも人材が必要になります。現在、採用活動の間口を広げていますが、思うような成果には至っていない状況です。人材教育の面では、一昨年から階層別・ポジション別教育を実施しているところで、成果が顕れるまでには一定の時間を要すると見込んでいます。
泉)今のお二人のご指摘と通じるところですが、グローバル化に向けては、現地法人のリーダーを現地で採用することが重要です。ホース・チューブ製品事業においては、韓国の事業所以外では日本人に依存しています。韓国は30年以上の歴史があり、現地人材が上層部にいますが、他国は会社設立から15~20年程度のため、現地で責任者やリーダーが育っていません。各国、現地人材の採用競争も激しく、まだ実現できていない状況です。
黒川)成長を実現するためには、営業力の源泉となる「品質・コスト・納期」の強化が不可欠です。その鍵を握るのがDXの推進です。例えば、生産管理の自動化やAI検査の導入により、人件費の削減と品質向上の両立が可能となります。また、海外市場への展開においては、特にカスタマイズ製品等をお客様の近くで製造し、ニーズを直接把握することで、タイムリーな提供を実現することが重要です。人材面では、女性が働きやすい職場づくりやシニア人材の再雇用等、多様な人材が活躍できる環境整備にも力を入れています。全ての社員が、経験を積みながら活躍できる職場づくりが進んでいます。
泉)人材の確保は本当に重要な課題だと思います。日本においては従業員の採用も厳しい状況です。人材確保が厳しい中で、シニアや女性の採用、活躍が進んでいますし、その中には優秀な方も多く、これまで以上に女性スタッフがリーダーになる事例が増えています。そういった方々が活躍できる職場環境づくりや体制を整備することが、グループ全体の成長につながると思います。
成長戦略の鍵となる事業部間連携について
黒川)ベルト・ゴム製品事業には、複数のSBU(戦略事業単位)が混在しており、事業戦略の違いから連携が難しく、シナジー効果が得られにくいという課題がありました。この課題に対応するため、2025年春にグローバルマーケティング部を事業部直轄の組織としました。これにより、両事業グループ間の連携を強化し、特に化成品事業グループの製品におけるグローバル展開の加速を図っています。インド市場では、ベルト製品事業、ホース・チューブ製品事業、空調製品事業の3事業が連携し、「NCI(ニッタ・コーポレーション・インディア)」の成長戦略を推進。工場の移転・拡張を進め、従来のベルト製品やホース・チューブ製品に加え、空調製品(エアフィルタ等)の製造も計画しています。
鈴木)空調製品事業でも、インド市場向けのフィルタ製品の製造販売を、グローバル推進室との連携によって効率的かつ迅速に推進しています。また、インド市場での事業部間の連携強化や、事業部内での営業情報の共有や技術開発など、日々の業務で協力体制を築く等の取り組みをしています。さらに、テクニカルセンターとも連携し、基礎技術の開発を進めています。

藤田)化工品事業でも、近年ますます他の事業部門との連携が盛んになっています。ニッタグループの販売会社である株式会社パワーテクノやニッタテクノソリューションズ株式会社と協働した販促活動をはじめ、ニッタのテクニカルセンターと環境配慮型製品の開発を推進する他、トラック・バス用空気ばね事業の損益改善のため、コストダウン施策を推進しています。
泉)ホース・チューブ製品事業では情報共有や海外展開で事業部間連携を進めています。例えば、アメリカ市場ではベルト・ゴム製品事業が構築した代理店網を活用し、ホース・チューブの拡販を実施しています。ただ、海外では事業ごとに会社が分かれているため、連携強化が今後の課題です。各事業がバラバラに海外進出し、それぞれ管理部門を持つことになっては非効率です。例えば中国には多数の子会社がありますが、さらなる効率化のため、事業体制の効率化を検討していきたいです。
黒川)2030年度には、2020年度比で海外売上比率180%の達成を目指しており、インド市場はその中核拠点として位置づけています。現在は新工場の建設段階にあり、空調製品への期待やホース・チューブ製品事業のオートビジネスでの成功等、3事業間のシナジー創出が事業成否の鍵を握ります。主管事業部として、まさに今が正念場と捉えています。
140年の歴史を支えるニッタの強さ
そして、新たなる課題や取り組みについて
泉)当社の強さはお客様の要望に真面目に対応し、信頼を構築してきたところにあります。その一方で、相手に寄り添うだけでなく、自分の考えや意見を積極的に打ち出すことも、自身や会社の成長のためには大切です。その点で今は少し、チャレンジ精神やスピード感が不足しているようにも感じます。
黒川)私も同感です。当社に限らず、日本社会全体が保守的な傾向にあり、当社でも海外赴任への意欲が低下しています。失敗に対する減点評価的な風土に陥ってしまうとチャレンジ精神を阻害する恐れがあります。だからこそ、「失敗も加点する」くらいの評価制度改革があっても良いのではないでしょうか。
鈴木)当事業では皆に夢や未来を語ることで、前向きなマインドに変えることに注力してきました。ワクワク感がある事業が今後伸びていく、そんな空気を社内につくることが大切だと。そして、少しずつ結果も出てきています。一人ひとりが前向きに動くことで、効率的な動きになり、少人数でも大きな力になります。事業部内で「会社では一つの歯車ではあるが、ただの歯車ではなく、自分で動ける、周りを動かす歯車になれ」と伝えています。
藤田)化工品事業では、新製品や新事業のアイデアを出させるような機会をつくっていきたいと考えています。いきなり新製品のアイデアと言っても知見やノウハウがないので、まずは発想を少し転換したり、応用させたりするアイデアです。化工品事業は成熟した製品が多いですが、市場が変わることでまだまだ伸ばすことができます。そういう活動を繰り返す中で、自分たちのビジネス、会社、そして未来を、自分たちでつくる、そういう機運を育てたいと考えています。
黒川)当社では、140年にわたり創業者・新田長次郎の「発明・改良・円満」の精神を受け継いできました。「人々を幸せにしたい」「世の中を良くしたい」という価値観が企業文化の根底にあり、私は「オープン&フェア」を自身のミッションとしています。誰もが対等に意見を出し合える社風が一体感を生み、未来に向けたベクトルを揃えることで、企業は大きく成長できると信じています。
さらなる未来の成長を見据える中
次代に求められるニッタのあるべき姿

泉)当社は「熱意・進取・誠実・敬意」の精神を受け継いできましたが、成長スピードには課題を感じています。ニッタ・ムアー事業部やゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社、ニッタ・デュポン株式会社等、40~50年前に取得した事業が今、大きく成長して会社の柱となっていることを考えると、当時の挑戦意欲やスピード感を今一度取り戻す必要があります。そのためにも、自分の意見を言う強さや風通しの良い職場環境が重要です。私自身、社内外で対等な関係を重視し、お客様にも敬意を持って率直に提言することで信頼が深まり、開発案件にもつながっています。黒川さんの言う「オープン」な姿勢は、社内外問わず不可欠です。
藤田)化工品事業がニッタグループに加わって約8年になりますが、「発明・改良・円満」の理念のうち、「円満」という言葉に強く惹かれました。他の会社ではあまり見られない発想であり、ニッタには人を大切にする文化があると感じたからです。社内や代理店、またお客様を大切にすることで、良い製品を生み出し続け、固定のファンを得て、安定した成長につながっています。しかし、今後はグローバル市場での戦いです。スピード感や厳しさも必要です。仲間やお客様を大事にすること、自分の考えを貫くことを両立させていくことも必要です。
鈴木)新田長次郎の理念や現在のグループ理念で示すように、お客様の信頼を得るための努力や姿勢、真摯な仕事への取り組みは変えてはならないことだと思います。お客様や仲間のいろいろな想いやニーズをくみ取り、意見を取り入れながらお客様と一緒に進むということは簡単ではありませんが、今後もニッタにあるべき姿だと思います。
黒川)これまで当社は、各事業が独立採算制で運営されてきたため、製品群が多岐にわたり、事業間のシナジーが生まれにくい状況にありました。今後は、事業単位での最適化から、当社グループ全体としての最適化へとシフトする必要があります。多角化にはリスク分散という利点がありますが、全ての分野に均等に注力するのは現実的ではありません。ポートフォリオの再構築によって経営資源の効率化を図り、成長が見込まれる分野に集中投資することで、当社はさらに力強く成長できると確信しています。そのためにも、事業間が「円満」で「オープン&フェア」な関係性を築き、未来に向かってともに挑戦していく姿勢が不可欠です。
■ ベルト・ゴム製品事業
 
事業のシナジーが重要
今が、成長に向けた正念場です
グローバル戦略に向けてインド市場はとても重要な拠点です。工場が新設されることで、エアフィルタ等の空調製品や、ホース・チューブ製品事業のオートビジネス等、3つの事業のシナジー効果によって、新市場の開拓を目指します。主管事業部としては、このフェーズ2が正念場だと感じています。
■ ホース・チューブ製品事業
 
成長を支える人材の確保と
皆が活躍できる体制整備が重要
当社の成長戦略にとって人材の確保は最も重要な課題の一つ。グローバル拠点においては現地人材のリーダー獲得や育成が急務です。またシニアや女性の採用、活躍が進む中、女性リーダーも育っています。皆が活躍できる職場環境づくりや体制の整備によって、グループ全体の成長につなげていきたいです。
■ 化工品事業
 
柔軟な発想とアイデアで
新たな市場開拓に挑みます
未来の成長には新市場や新事業の開拓が必須です。既存製品においても市場が変わることでまだまだ売上高を伸ばすことができます。新しいアイデアや柔軟な発想を皆が出し合い、新たなビジネスの開拓に挑戦していくことも大切です。自分たちのビジネス、会社、そして未来を、自分たちでつくる、そういう機運を育てていきたいです。
■ 空調製品事業
 
ワクワクを感じる事業が
未来に大きく伸びていく
ともに働く仲間が、夢や未来を語ることも大切です。ワクワクを感じる事業が未来に伸びていく、そういう空気が社内に溢れることで、一人ひとりが前向きに行動し、少人数の組織でも大きな力となります。社員には「自分で動ける歯車になれ、周りを動かす歯車になれ」と伝えています。