サステナビリティ
トップメッセージ
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「SHIFT」にかける想い
中長期経営計画「SHIFT2030」がスタートして3年目を迎えます。「SHIFT」には、社会の変化に対応し、顧客ニーズに応え続けるニッタのものづくりにかける想いと、その活動をさらに加速させる挑戦と決意が込められています。「SHIFT2030」始動から2年、この間、COVID‑19、世界経済の低迷、資源・エネルギー価格の高騰等、いくつもの大きな変化の波が、私たちの前に立ちはだかってきました。あらためて「SHIFT」に込めた想いを心に刻み、大変革の時代に対座する覚悟を持って、前進し続けていくことを決意しています。
ニッタグループ理念「NITTAは動かす、未来へ導く製品で。世の中を前へ、そして人々を幸せに。」と掲げているように、私たちが創り出すさまざまな製品が人々の幸せにつながること。それが創業者の願いであり、ニッタグループが138年にわたって継承する想いです。そして今、私たちは20年先、そして100年先の世界を見据えています。事業の継続と、更なる成長を目指す未来のために、今、何を為すべきか。その解のひとつは、創業以来、脈々と培われてきた「ニッタらしさ」にあります。激動の時代に誕生したニッタは、常に時代の変化を見据え、社会に役立つ製品を創出し続けてきました。そのDNAが私たちには受け継がれています。
ニッタグループは挑戦し続けます。「SHIFT2030」実現に向け、そして更なる未来の成長に向け。
永続的な企業価値創出には、何よりもステークホルダーの皆様との信頼関係が重要となります。ともに豊かな未来、理想の世界を目指すパートナーとして、何卒ご理解とご支援のほどお願い申し上げます。
2年連続で過去最高となる売上を記録
2022年度はロシアによるウクライナ侵攻の長期化をはじめ、世界的な金融政策の引き締めによる景気の下振れ、そして資源・エネルギー価格の高騰等、非常に不安定な社会情勢が続いた1年となりました。そんな中、当社グループの2023年3月期の業績につきましては、過去最高の売上高を記録し、2022年3月期に続いて2年連続で過去最高売上を更新しました。利益面は若干ダウンしたものの、3年前にCOVID‑19の影響を受け、そこから盛り返してきたことを鑑みれば、いい形で1年を終えることができました。2030年へ向けた中長期経営計画の目標達成に向けて順調に推移しているものと考えています。
また当社グループの主要市場においては、半導体業界向けや物流業界向けは設備投資等もあり、年間を通じて堅調に推移いたしました。自動車業界向けも後半にかけて回復傾向となっており、次の年度へ向けた良い流れが見えてきています。中長期経営計画「SHIFT2030」の3年目を迎える中、引き続き、社会情勢の変化や厳しい経営環境に直面することが予測されますが、時代の変化を自らの糧とし、更なる成長に向けて邁進していく所存です。
2022年 3月期 実績 |
2023年 3月期 実績 |
増 減 | |
売上高(百万円) | 83,734 | 88,000 | +5.1% |
---|---|---|---|
営業利益(百万円) | 5,337 | 4,989 | -6.5% |
経常利益(百万円) | 13,193 | 12,900 | -2.2% |
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円) | 10,489 | 10,853 | +3.5% |
ROE(%) | 9.3 | 8.8 | ― |
3年目を迎える中長期経営計画「SHIFT2030」
中長期経営計画「SHIFT2030」の達成においては、事業の収益性向上がより重要であると捉えています。まずは、既存事業における収益体質の強化が不可欠です。既存事業は継続ありきで捉えるのではなく、「事業のリストラ」という発想で、伸びていく事業と低迷する事業を見極め、より伸びる事業に対してリソースをかけ、選択と集中をしていきます。
また原材料費の高騰や物流コストの増加に対し、細かな打ち手を地道に重ねていくことで、仕入れコストを抑えていく必要があります。その中で、コスト削減や省力化に向けた重要な取り組みのひとつが、「DX(デジタルトランスフォーメ―ション)」です。データ活用体制の構築を着実かつ迅速に実行することと並行して、業務の進め方を自ら分析し、合理的で効率的な仕事の進め方に取り組むことで、業務効率の改善や向上を目指していく必要があります。
中長期経営計画「SHIFT2030」は、COVID‑19により大きく社会が影響を受ける中で、スタートしました。そして、その変化は働き方改革やデジタル化という新しい波を私たちの暮らしや社会にもたらしました。当社グループにおいても創意工夫をしながら、時代の変化や社会からの要請に対応する中で、「デジタル統括推進チーム」を立ち上げ、リモートワークの普及に努める等、さまざまに新しい手法や発想が生まれてきました。そして現在、COVID‑19の感染症区分が第5類になり、以前の日常が戻りつつあります。COVID‑19はデメリットだけでなく、暮らしや社会、働き方を変える大きなチャンスでもありました。「ニューノーマル」として新しく生み出されたものの中には、良いものがたくさんあります。全てをもとに戻すことはなく、良いものは残していくこと。社会や働き方はこれからもますます変化していきます。新しい取り組みの一つひとつを、時代の変化に合わせてさらに昇華させ、次代に最適化していくことが大切だと感じています。大きな時代の変革期とともにスタートした「SHIFT2030」。変化こそ推進力と捉え、新しい取り組みや発想を生み出していくことで、更なる成長を目指して参ります。
人的資本の強化に向けた人事制度改革
当社グループの持続的成長に向け、人的資本の強化を積極的に推進していく考えです。2022年4月から「人事制度のSHIFT」として、約2年かけて制度改革に取り組んで参ります。まずポイントとなるのが成果主義へのシフトです。終身雇用を前提とした年功序列型の制度ではなく、業績に応じた給与や昇進の制度へと、段階的に変革していきます。多くの日本企業が人材不足の課題を抱える時代、成果主義を柱とした人事制度改革は、良い人材を集め、また確保していくための重要な施策になります。
また、同時にシニアと女性の雇用拡大も重点的に取り組んで参ります。シニアがもっと活き活きと、モチベーションを高く働くことができる体制や、職場環境づくりを目指します。そのためには、同一労働同一賃金を基本に、成果に見合った報酬が得られるように制度を見直します。加えて女性の雇用に関しても、制度の改善を図って参ります。国立機関のシミュレーションによると、女性が2人出産後、育児休暇6ヶ月後に職場復帰した場合は生涯賃金が約2億3000万円になるのに対して、出産時に退職してパート勤務になった場合は生涯賃金が約6000万円と、大幅に下がってしまうというものです。これは、日本社会全体にとっても大きな損失です。そんな中、厚生労働省が「3歳までの子どもがいる人がテレワークでも勤務できる仕組みを企業の努力義務とする」等、日本政府も女性の出産後の継続雇用を後押ししています。当社グループにおいても、女性が出産後も職場復帰するための制度に加え、男性の育児休暇も含めて、子育て世帯が安心して働くことができるように、サポート体制を今後もさらに充実させていく考えです。そのためにも、当社グループの人事部や役員だけでなく、女性幹部社員の声を活かし、人事制度改革や職場環境づくりに積極的に取り組むことが必要だと感じています。
現在は、人材の流動化が進み、転職の壁がますます低くなっており、人材の多くは、転職することによって報酬やキャリアアップ、能力やスキルの向上を目指しています。2022年の調査によると、「日本の企業では給与が上がったのは3割程度」で、賃金が上がらないことで待遇への不満が高まっている、といわれています。これは、社員の報酬への期待や成長への意欲に、多くの企業が応えられていないという現状を示しています。しかし、会社が働きがいを感じてもらえる環境づくりを行い、意欲に応えられる学びの機会をつくりだすことで、社員の成長をサポートできれば、ひとつの会社で長く勤務しながら、自身の成長が実感できると思います。そして、能力を高めて成果を出すことで、満足感が得られるという良い循環が、労働意欲の向上につながると考えます。一方で、「社員の満足度」を客観的に図ることは難しい課題です。満足の尺度をどう図るか。制度をつくるだけでなく、その効果や成果を検証していくことも、人事制度改革の重要な取り組みと考えます。
20年先の成長へ、新規事業開発の取り組み
既存事業の「深化」と新しい事業の「探索」が、中長期経営計画「SHIFT2030」の基本となる考えです。2030年への目標達成、そしてさらにその先の未来を見据えた成長には、新規事業の開拓が特に重要になってきます。現在の経営を支える主力事業や製品が、未来永劫続くことはありません。20年先の事業の柱をつくるために、新規事業は最重要課題であり、積極的に取り組みを重ねて創出しなくてはなりません。
「NamdTM」は、カーボンナノチューブを使ったニッタ独自の新しい技術で、学会で表彰される等、第三者からも高く評価されており、現在、期待を持って事業化を進めています。既にスポーツ用品関連で採用いただく中、当社グループが次に目指すのは産業用途での展開です。第8工場棟という新しい建屋も本年3月に竣工しました。そこを足がかりにさらに事業を拡大していく計画です。
また、「新事業探索チーム」が稼働をはじめて2年目を迎える中、新規事業の創出に向けて精力的な活動を続けています。私は技術開発の出身で、新しい技術開発や事業の創出がいかに難しいかを熟知しています。40数年前は、検討した事業のうち3割が形になれば成功といわれた時代、現在は100にひとつ事業化されれば大成功です。また当時は、お客様から製品に対する要請が多くありましたが、社会が複雑化・多様化する現代では、お客様自身もどういった製品が必要かを掴めず、明確なニーズが当社グループへ届くことが大幅に減っています。ヒントが限られた中で、新しい製品や技術を探索しなければなりません。そこには営業担当者や技術者の、センスとひらめきが必要になってきます。時代の変化に先回りし、社会に必要となるものを予測する想像力が求められます。そのためには、日頃から訓練や教育が必要です。現在、新入社員研修においても、仮説提案型の研修を取り入れています。当社グループにある既存の技術や製品を社会課題にどう活かすか。また社会の課題解決のためには、どのような新しい技術や製品が必要か等、企画を考え、事業化へ向けた計画をプレゼンテーションします。既存の概念にとらわれない感性や考え方、また行動力を養うための教育や訓練等、当社グループの未来を担う人材を育てるための草の根的な取り組みを推進しています。
環境貢献への取り組み
CO2排出削減においては、2030年の目標である2013年比-46%達成に向けて、順調に取り組みを進めています。当社グループの製造部門を中心とした取り組みはもとより、「Scope3」対応としてサプライチェーンと協力した活動を開始するほか、当社グループが新しく建設する建屋には必ず太陽光発電設備を設置する等、事業活動におけるCO2排出削減活動および環境投資を積極的に推進しています。
また、「国連グローバル・コンパクト」や「TCFD」への参画を通じて、グローバルレベルでの環境貢献を果たし、“未来に責任を持つ企業”としての姿勢を明確に示して参ります。また、CO2排出削減やイニシアティブへの参画だけでなく、社会が永続的な成長に必要となるさまざまな環境や社会課題の解決に取り組むことで、真に社会的責任を果たし、当社グループの持続的な企業価値向上を目指して参ります。
未来への成長、その指針となるもの
ニッタグループが未来に向けて成長を続けていくためには、「ニッタの強さ」「ニッタらしさ」というものを、私たち自身が知り、理解しておく必要があると考えます。大正時代、創業者が社員に向けた訓示に「世の中には10年後には10年の進歩があるもので、10年先の進歩を今悟り、20年後の進歩を数年内に悟るようにしないと世間以上の進歩は得られない」とあります。加えて、「可能性のある10の案件のうち8から9件は失敗するもので、良さそうな1、2件を追求することが偉大な成果を収められる」とあり、創業者の事業にかける覚悟や、事業の厳しさ、難しさを思い知りました。また、この訓示は私の考えにも通じ、創業者のDNAを私たちも受け継いでいることをあらためて自覚しました。これこそが「ニッタらしさ」ではないでしょうか。この訓示を胸に刻み、あらためて新規事業の開発、そして未来への大きな成長に向けて、意を強くしたところです。
ニッタの創業は伝動革ベルト事業から始まりました。日本初となる伝動革ベルトを開発する中、皮をなめすためのニカワを採るために柏の原生林を求めて北海道へ渡り、そこからベニヤ事業を展開し、またゼラチンを製造する等、事業を多角化していきました。ニッタは長い歴史の中で、いくつもの不況の時代を乗り越えて成長を続けてきました。それは、事業の多角化によるもので、これもニッタDNAのひとつです。北海道の森林には、そういった成長の軌跡やニッタの強さが刻まれています。北海道の森林事業をニッタグループの「象徴事業」として位置づけ、守り抜き、続けていく考えです。
そして、継続していくためには、大きく儲けることを求めるのではなく、健全な事業として長く育てていく考えです。
一方で、ひとつの事業をコツコツと長く続けていくことだけが「ニッタらしさ」ではありません。事業を多角化し、選択と集中によって、成長する分野にリソースをかけていく。そうすることで、事業は大きく育ち、より広がり、また新しい価値を創出する。そんな、創業から現在に至る「ニッタらしい」事業の軌跡は、未来の更なる成長に導くための重要な指針となっています。
新たな事業開発へ向け、そして更なる企業価値向上に向け、ニッタグループは挑戦を続けて参ります。諦めずに挑み続ける姿勢、それもまた「ニッタらしさ」であり、成長への原動力です。中長期経営戦略のゴールである2030年へ、そして、その先の未来へ向け、ニッタグループの更なる飛躍に是非ともご期待ください。