サステナビリティ
トップメッセージ
トップメッセージ

おかげさまで当社グループは、2025年3月に創業140周年を迎えました。これもひとえに、日頃からの皆様のご支援、ご厚情の賜物と心より感謝申し上げます。この大きな節目を迎え、代表取締役社長としての重責を担うにあたり、当社グループのさらなる成長を目指すべく精一杯社業の発展に力を注ぐ所存です。2021年からスタートした中長期経営計画「SHIFT2030」は、今年度よりフェーズ2に入りました。フェーズ1ではコロナ禍等、厳しい経営環境にありながらも数値目標をクリアすることができました。フェーズ2ではその成果を弾みに、既存事業の拡大と収益力向上に加え、新事業・新市場の開拓により、さらなる大きな目標の達成に向け、当社グループの総力を結集して挑みます。今後とも変わらぬご指導ご鞭撻の程何卒よろしくお願い申し上げます。
グローバル戦略と新事業開拓のさらなる推進

中長期経営計画「SHIFT2030」フェーズ2(最終年度2027年度)は売上高1,050億円、フェーズ3(最終年度2030年度)では売上高1,200億円を目標として掲げています。本年度スタートしたフェーズ2は、既存事業の拡販および収益性向上に加え、これまでに開発された新技術や新事業の芽を着実に育てる実行力が求められる期間と位置づけています。
その中核を担うのがグローバル戦略です。昨年度、全社横断的な推進組織として「グローバル推進室」を新設しました。当社はこれまで事業部門ごとにグローバル展開を進めてきましたが、グローバル推進室は事業部門の枠を超えニッタグループとしてのグローバル展開を推進することを目的としています。もっとも、今後のグローバル戦略や展開を全てグローバル推進室が担うというわけではありません。各事業部門は事業部門としてグローバル化を進めつつ、グローバル推進室が各事業部・子会社と連携を図りながら、海外取引先からの情報収集や販売店ネットワークを活用し、従来の事業範囲に限らない新しい情報を海外市場やお客様から収集する役割を担います。また、実践的な経験を通じたグローバル人材育成の受け皿としての機能も有します。
グローバル展開ではベルト製品事業が先行して実績を築いており、既にお客様との信頼関係や強固な販売店ネットワークを構築しています。これらのネットワークは当社の貴重な情報源であり、営業上の得難い資産でもあります。当社がこれまで長年にわたって築いてきたネットワークを、グループ各社や事業部等が単独ではなく連携して活用することで、より一層の強化を図っていく考えです。
また、国内市場においても、販売店との連携を一層強化し、信頼関係の深化を図っていきます。日本国内には世界のマーケットを凝縮したような市場構造があり、国内のお客様とのコミュニケーションを通じて、グローバル展開に有用な知識や情報を得ることもあります。こうして国内で培った経験や信頼関係は、グローバル展開の重要なノウハウとなります。そのため国内のお客様との関係性をより強化していくことは、今後のグローバル展開を進める上でも非常に重要なことだと考えています。
私自身、工業資材事業部で責任者を務めた経験からも、ビジネスのやり方や信頼関係の構築等、基本となるものは国内海外に差がないと感じています。お客様のニーズを的確に把握し、困難な課題にも諦めず解決に導くことで、信頼関係は着実に構築されます。海外市場では急な組織改編や担当者変更等で、人脈がリセットされるケースもありますが、それはこれまで関係が結べなかった取引先を新規で開拓できるチャンスにもなります。社員には、国内外の枠にとらわれず、お客様との信頼関係を築くことで自らを成長させ、将来の事業展開に貢献してほしいと思います。
国内外問わず、現在は市場や経営環境の変化によって、適宜、組織を再編・創設する時代です。こうした変化に臨機応変かつ迅速に対応していくことは、どの国や地域においても重要です。そしてまた、当社が創業から継承する事業理念やものづくり精神には、国内外の市場を問わない普遍の価値があり、グローバル戦略をはじめ新市場の開拓を必ずや成功に導けるものと確信しています。そのためには、海外や新たな市場で力が発揮できる人材がこれまで以上に重要な存在となります。当社ではかねてより「海外トレーニー制度」によって若手グローバル人材の育成を推進してきました。今後はさらに「グローバル推進室」においても海外勤務の実務をはじめ、現地拠点や関係先との交流等による人材育成に積極的に取り組み、グローバル人材の確保・育成を推進していきます。
「選択と集中」で経営資本を成長市場へ

当社は創業から「人を大切にする経営」を重んじ、教育熱心な企業風土を育んできました。また、近年では人事制度改革や階層別教育を通じて、時代に応じた職場環境づくりを推進しています。人材不足は喫緊の課題であり、これまで以上に人材の確保や教育が大切になることに加え、効率的かつ効果的に人材を配置・配属し、個々の能力を最大限引き出せるように体制を整備することが重要です。昨今のAIの急速な進展と技術革新により、社会はデジタル面で著しい進歩を遂げています。しかし、人と人が関わるビジネスには、人にしかできない部分が必ず存在します。自動化できるところはAI等に任せて、人にしかできない業務により多くの時間を割けるよう工夫していく必要があります。そのため当社ではかねてよりDXによる省力化を進める一方、人の力や技術が重要となる部門には重点的に人材を登用する等、効率化と成長の両立を図っています。
事業の収益性向上はもとより、人材の有効活用、投資資本の適正化という観点においても、既存事業の選択と集中、事業や製品の仕分けが重点課題となります。そのため、昨年度より財務指標の目標として新たに「事業ROIC(投下資本利益率)」を導入し、事業や製品単位での収益性を管理しています。事業別にROICを算出し、選択と集中を進め、収益性の向上および企業価値の向上に取り組みます。経営の多角化は当社の特長であり強みの一つですが、各事業部の独立採算制による長年の事業活動によって、数多くのSBU(戦略事業単位)が生まれました。各事業部門が抱える人員や設備、ノウハウ等のあらゆる資本を連携・再配分し、成長市場へ集中していく方針です。既存事業の拡販や収益性向上によって経営基盤をより強固にし、さらに獲得した資本を、付加価値を創出する事業へと積極的に投資することで、中長期にわたる持続的成長を目指します。
新事業の創出としては、Namd™の高付加価値産業分野への展開を進めていきます。また、医療・ライフサイエンス分野においては、「無菌製造環境システム」の開発と市場展開を推進するとともに、再生医療向け「細胞シート製造装置」の共同開発プロジェクトを通じて、実用化に向けた取り組みを進めています。
2025年1月に設立した「わくっとニッタ」は、メープルシロップ事業から開始していますが、北海道の社有林を有効活用することを軸とした、新たな事業開発にも取り組んでいきます。
中長期経営計画フェーズ1での売上実績を受け、フェーズ2では3年間で約150億円の売上拡大を目指す方針です。この大きな目標を達成するためには、M&Aを含むスピーディーでダイナミックな事業展開が求められます。M&Aの成果が数字に顕れるには歳月を要するため、フェーズ2の段階から多くの案件に取り組み、短期・長期の両面で事業開発を進めていく考えです。当然、全ての取り組みが成功するとは限らないことは認識しています。そのため、常に複数の可能性を模索し、追求し続けていくことで、フェーズ3やさらにその先の成果へと、着実につなげていくことを目指します。
全てのステークホルダーとともに未来へ
未だ不透明で困難な時代が続く中、私たちニッタグループは、これまで以上に変化を見据えた柔軟かつ実行力ある対応が求められています。
この大きな変化の波を乗り切り、次の成果へつなげていくために、当社グループが一体となって力を集結することが不可欠です。事業部間の連携強化はもちろん、国内外の販売店・取引先との信頼関係をさらに深め、表層的なニーズ対応に留まらず、潜在的なニーズを見極め、提供し続けていくことが大切です。そのためには全てのステークホルダーとの対話や協働が欠かせません。社内でも、異なる事業領域の社員同士が互いに助け合い、健全な関係を築きながら成長を目指す、そんな組織であり続けたいと考えます。社員一人ひとりには、「日本にないものをつくる」「ものづくりを通して社会に貢献する」という創業者の想いが脈々と受け継がれ、その精神は現在の当社グループ理念にも落とし込まれています。経営者としては、創業者の理念を社員の行動計画へと落とし込み、全ての社員が豊かな発想力や実行力、熱意を発揮できる職場環境づくりに努めます。
また当社は、社員一人ひとりの健康が企業の持続的成長の基盤であると考え、健康経営に積極的に取り組んでいます。心身ともに健やかに働ける職場環境の整備を進め、社員の健康保持・増進を支援することで、企業価値の向上と社会への貢献を目指します。
社内外の交流や共創を通じて多様な意見に触れることは、創造力の育成にもつながります。
社員一人ひとりの力こそが、当社の持続的成長支える大きな原動力となります。
当社を支えてくださる投資家の皆様には深く感謝申し上げます。今後も皆様との対話を大切にし、成長や成功の喜びを共に分かち合える関係性を築いていけるよう努めます。当社は利益還元を重要な経営課題の一つとして認識し、企業体質の強化を図りつつ、業績に応じた適正な利益配分を行うことを基本方針としています。「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向け、株主還元方針(連結配当性向30%以上、株主資本配当率DOE2.5%以上)を目安に、2028年3月期まで毎年1株当たり10円以上の増配を計画しています。安定的かつ着実な増配を継続的に実施することで、ご期待に応えていきたいと考えます。
私の新入社員時代、奈良工場に当時掲げられていた「会して議し、議して決し、決して責を取る」という言葉を、今も心の中に深く留めています。仲間が集まり、取るべき行動を決め、責任を持ってやり抜く。困難に直面したときや大きな目標に挑むときこそ、皆で力を合わせ、決して諦めることなく最後までやり切る。それが当社の強さです。社員一人ひとり、そしてグループ各社の力を結集し、全てのステークホルダーの皆様とともに、「SHIFT2030」のあるべき姿へ、そしてさらにその先の未来へ向かって邁進していきます。
