サステナビリティ
トップ対談
TALK 01数字は順調だが、物足りない面がある─池田
戦略を磨き、投資を前へ進める─北村
池田:10年計画の『SHIFT2030』は、いま中盤戦、フェーズ2の折り返しです。計数面では、円安の追い風はあるとはいえ、コロナ禍や関税問題といったマイナス要因も乗り越え、順調に進んでいると評価しています。
北村:ありがとうございます。ただ、定量目標を達成しているから大丈夫だ、とは考えていません。事業ごとの進み方には差がありますし、数字の中身まで見れば、次に向けて手を打つべき課題は残っています。
池田:確かに、中身を見れば事業ごとに凸凹がありますね。海外展開は成果が出てきている。しかし、新規事業の進捗は物足りない。成長投資も、もう一段踏み込む必要があります。全体が計画線上にあるからこそ、次の5年でどこを伸ばすのかを明確にする必要があります。
北村:ご指摘のとおりです。他の社外取締役の皆様からも「新事業への取り組みと、成長投資が弱い」とご指摘をいただいてきました。まず成長戦略を明確にし、それを実行するための投資を、2030年まで見据えて、必要なものは前倒しで組んでいく。設備をつくるのにも時間がかかる時代ですから。
池田:そこには、スピード感のある決断と実行力が求められます。投資額の大きさだけではなく、どの市場で、どの事業を、いつまでに成長させるのか。その戦略と結びついていることが大切です。
北村:早い段階で、より明確に示す予定です。すでに各事業部との間で、通常の会議とは別に成長戦略を議論する場を設け、動き始めています。また、取締役会でも社外の皆様のご意見をいただき、実行につなげていきます。
TALK 02グローバルには、まだ伸びしろがある─池田
事業の壁を越え、新しい市場を拓く─北村
池田:成長戦略で大事なのは、海外売上比率を高めることです。事業内容の近い他社と比べても、海外比率はまだまだ高められる余地がある。その点で、グローバル推進室には大いに期待しています。
北村:ニッタの海外展開は、ベルト事業が最初で、海外に現地法人を設けて事業を営むようになってから約50年です。相応のネットワークがありますから、後から育った事業も、そうしたリソースを活用して展開していく。事業の壁を越えて横串を刺すのが、グローバル推進室です。
池田:各事業部がそれぞれ海外へ出るだけでなく、互いの市場や情報を使えるようになれば、他社にはない展開ができるかもしれません。これまで進めにくかった部分を動かせれば、それが伸びしろになります。
北村:グローバル推進室は、事業部だけでは動かしにくい案件の最前線に入って、関係者をつないでいきます。案件が動き出したら事業部へ引き継ぎ、さらにその周辺で新たな可能性を探します。
池田:そうしたグローバル戦略の象徴が、インドですか。
北村:はい。ベルト、ホース・チューブに、エアフィルタを加えた3事業を、2026年2月に竣工した新工場で展開します。インドでは、ニッタという名前はまだ十分に知られていません。製造拠点ができたことを出発点に、3事業が情報や販売チャネルを共有し、現地のお客様との関係を築いていきます。
池田:海外売上比率を高めるうえでは、半導体分野も重要ですね。
北村:半導体関連も好機です。AIの波で装置需要が伸びるなか、長年の半導体装置メーカーとの取引で鍛えられてきた実績を、海外の装置メーカーへ広げていく。ニッタでは、ベルト、ホース・チューブをはじめ、複数の事業が半導体分野に関わっています。これまで海外で大きな採用に結びつかなかった案件にも、いまは新たな機会が生まれています。実績を一件ずつ積み重ねていきます。海外売上比率は、まだ全体の約3分の1。ここを、確実に伸ばしていきます。
池田:一方で、新規事業にはまだ大きな成果が出ていない。ただ、これは各社とも苦労している本当に難しい領域です。大きく飛躍しようとすれば、リスクも大きい。むしろ、本業やその周辺を、もう一度違う角度から見ることも必要でしょう。
北村:それは、まさしく『SHIFT2030』の考え方に通じますね。やみくもに飛躍を狙うのではなく、従来のコア技術や知見をもとに、いろいろな方法で広げていく。Namd™などの新技術の展開も、そうしたイメージで進めています。まずはコア事業を強くし、成長投資へ回せる利益を生み出す。その上で、国内で培った経験を海外へ持っていき、新しい用途や周辺製品を見つけていきます。
池田:一方では、北海道の事業も、興味深い可能性を持っている。規模は決して大きなものではありませんが、創業以来の森林資産を現在の事業につなぎ、一定の利益を生みながら、B to Cでニッタを知ってもらうことができる可能性があります。社会貢献だけで終わらせず、事業として持続性のある形にすることが大切です。
北村:北海道のメープルシロップ製造販売は、社員の提案から事業化しました。我々の社有林にあるヤマモミジやイタヤカエデから樹液を採り、日本で初めての本格的事業化を成し遂げた。まだ小さな事業ですが、多くの引き合いがあり生産が追いついていないほどです。まずは黒字化できる規模へ着実に育て、チーズなどを含む北海道の事業全体の中で可能性を探っていきます。
TALK 03成長戦略を動かすのは、人である─池田
多様な力を生かす、ニッタらしい環境を─北村
池田:そうした取り組みには、国内でもグローバルでも、やはり人材が欠かせません。少子化もあって新卒採用は各社とも厳しい中、キャリア入社者や、外国人、女性、シニアの人材を、ニッタらしい形でどう生かすかが問われます。採用人数を増やすだけでなく、入社した人の経験やネットワークを生かしていくことが重要です。
北村:今年は、技術者として優秀なインド出身・ベトナム出身の社員が加わる予定です。中国の現地法人では、日本への留学経験がある方に総経理を務めてもらっています。こうした動きが社内によい化学反応を起こすと考えています。
池田:海外で事業を根づかせるには、日本から人を送り続けるだけでなく、将来は現地の人が経営を担う形まで考える必要があります。
北村:インドを含むより多くの拠点でも、将来は現地の方にトップを担ってもらいたいと考えています。
池田:昨年からは新人事制度も動いていますね。ニッタらしい雇用の形をベースにしながら、意欲と能力のある人がより力を発揮できるよう、常に見直していくべき分野です。
北村:新しい人事制度について社員へのアンケートを行い、どのような仕組みがあれば働きやすいかという声を聞いています。制度をつくって終わりではなく、実際の受け止め方を確かめながら改善を進めます。
池田:他社の制度をそのまま取り入れるのではなく、実際に働く人の声を聞き、ニッタに合う形へ変えていく。そうした着実な取り組みが大切だと思います。
北村:人の成長がグループの成長につながると考えています。多様な人材が力を発揮できる環境づくりを進めていきます。
TALK 04真摯・丁寧な社風が、真価を発揮する─池田
ニッタらしいサステナビリティで歩む─北村
池田:私が長年の仕事で大切にしてきたのは、「勝ちすぎない」ことです。もっと利益を取れそうな場面でも、周囲に少し譲る。それが、長い目で見れば自分たちにもプラスになる。ニッタには、もともとそうした社風があるのではないでしょうか。活動の様子を見ても、真摯で丁寧。社会から評価される会社として141年も続いてきたのは、そのやり方が間違っていなかったからです。それ自体が、ニッタのサステナビリティ経営かもしれません。
北村:創業者が大切にした「至誠」は、まさにそこに通じるのだと思います。誠実に応え続ける、その姿勢は、森林事業にも表れています。創業者は、木を伐採した後に植林を行いました。ものづくりの会社が資源の循環まで考えるのは、当時としては珍しかったはずです。そこから社会に役立つ製品を生み出す。サステナビリティは、私たちがずっと続けてきたことなんです。
池田:時代が激しく動く中でも、培ってきたニッタらしさを磨きながら、必要な制度や組織は適宜変えていく。それが持続的な成長につながると思います。
北村:そうですね。信頼は、ニッタの大切な資産ですから。その意味で今、私たちが何より大切にすべきサステナビリティは、供給責任だと考えています。足元では、関税や石油の問題で、原材料が不足し、価格も上がっています。それでも、お客様が必要とするものをきちんとお届けするために、各部門が全力を挙げています。どんなときも供給責任を果たし続ける、それが信頼の土台だと考えています。
池田:外部環境がこれだけ激しく変われば、すべてを自社の努力だけで防ぐことはできません。それでも、状況を正確に把握し、打てる手を早く打つことが信頼を守ります。
北村:そのために、調達部門を中心に情報を集め、関係先と交渉しながら、必要な材料の確保に取り組んでいます。平時から積み重ねてきた取引先との関係や、各部門が持つ情報が、こうした局面で力を発揮します。
池田:このように事業環境が激変する時期には、業界再編や新たな提携の動きも出てきます。そのとき、財務面も含めて余力がある企業が、次の段階へ進める。ニッタはその条件を満たしていると考えています。ぜひ周囲の動きにアンテナを張って、着実に歩んでいただきたい。期待しています。
北村:これまで培ってきた強みを守るだけでなく、次の成長へ使うことが必要です。事業や地域の壁を越え、必要な決断を行い、実行していきます。
池田:就任2年目を迎え、これから、より北村色が表れてくると思います。期待しています。
北村:池田さんは、金融をはじめ、私たち製造業とは異なる世界で豊富な経験を積んでこられました。取締役会でも、私たちが思いもしなかった角度から意見をいただきます。これからも、ぜひ厳しいご指摘をいただきたい。それを指針に、決断と実行をしていきます。
